{Interview}
SHINBIを究める
人形師 原 裕子さん

時代に合わせた人形づくりで文化をつなぐ

日本人形の老舗「五色」で三代目として、伝統を紡ぎ続ける原裕子さん。自身も一児の母であり、親から子への想いを込めた人形を届けています。

人形師を継ぐきっかけ。

実は留学するまで一度も人形師になろうとは思っていませんでした。
とても身近な存在だったので、あまり「仕事」として意識をしなかったんです。きっかけになったのは、留学先のルームメイトの一言。なりたい職業が見つからなかった私に「実家の職業が素敵だからやりたいことが見つからないんじゃない?」と。すごくハッとしましたね。そして帰国後に人形師を志しました。

人形やお祝いの文化とは、
家族の「愛」を表現するもの。

人形師として天才と言われた祖父に追いつきたいという気持ちが強かったのですが、“出産”がその考えを変えてくれました。かなりの難産だったため、娘が生まれたときは、本当に嬉しくて奇跡だと思いました。「五色」にいらっしゃるお客さまは、そんな奇跡を経た、愛する子供たちを祝うために人形を買いにいらっしゃるんですよね。母親になり、私たちがつくる人形の役割って何だろうと考えたときに、人形は親が子供を想う無償の愛をカタチにしたものだということに気づいたのです。そこからは人形づくりにより責任感をもつようになりました。

女性人形師だからこそ意識する「品」。

品の良さは意識してますね。日本文化が詰まった人形を見て育つので、お子さんの中で育まれる美の感覚や人としての品が培われていくと思っていて。だから雰囲気や佇まいから品を感じてもらえるような人形づくりをめざしています。実際にお子さんが人形を大切そうに触ったり見ていたりするという声をいただくとうれしいですね。

伝統をつなぐために
変えるもの、変えないもの。

文化をただ続けるだけ、ただ変えるだけではダメだなと思っています。例えば私の代からの特徴である、モダンで淡い色使いは、現代の住宅事情に合わせたもの。
今は洋風な家が多いですよね。実は私はインテリアオタクなので、祝い事とはいえ人形を置いていただく時に負担に思うものはつくりたくなかったのです。飾りたいと思っていただけるように現代の家に馴染む人形づくりを意識しています。

また、日本文化が少しずつ減っていく中で、良い職人を育てるためにも「美しい」と思ってもらえる文化の土壌をつくらなきゃいけないと思っています。そのために、インテリアやアパレル、アートなどにもアンテナを張っていて。そういった美しいものを見る目を培うことで、人形づくりにいかされていることもあるかなと思います。
文化づくりはゴールのない旅のようですが、まず「楽しい」と感じてもらえるような仕掛けを日々考えています。

〈PROFILE〉

原 裕子さん
人形師
原 裕子さん

1911年創業「五色」の三代目。
初代が考案した「笹目」といった技術を用いた柔和な顔立ちに、モダンな淡い色使いの衣装を合わせたりと、伝統と革新を両立させた文化を紡いでいる。

1911年創業「五色」の三代目。

初代が考案した「笹目」といった技術を用いた柔和な顔立ちに、モダンな淡い色使いの衣装を合わせたりと、伝統と革新を両立させた文化を紡いでいる。

五色「浅草橋本店」
〒111-0052 東京都台東区柳橋1-4-2
営業時間 9:00~18:00
https://www.hara-koushu.com/

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