ひとつひとつの傘に向き合い、美しさを究めていく伊丹小百合さん。職人ならではのこだわりを日々追い続けています。
もともと洋傘職人を志していたわけではないんです。前職でもまったく違う仕事をしていました。ただずっと日本のものづくりに関わってみたいと思っていて。5年前に「小宮商店」が職人を募集していることを知り、挑戦したいと思って応募したのがはじまりです。
東京都・東日本橋にある東京洋傘の老舗「小宮商店」。2018年に「東京洋傘」が東京都の伝統工芸品に指定され、小宮商店の品々も認定されました。
職人としてのこだわりは、傘を理想の谷落ち(骨と骨の間の生地のへこみ)に仕上げること。それには生地の裁断に使う型づくりから大事。
仮型をつくったり、本番用の木型はカンナで削ったり、ミリ単位で調整が必要です。お店の生地は一般的な生地よりも厚手のものなので縫うのも大変。張りすぎても緩すぎても良くないので、何度も張り直すこともあります。難しい分やりがいが大きいですね。
現在はもう販売されていない傘生地専用のミシン。
修理しながら使っているそう。
職人が自ら微調整して使う、生地の裁断用の木型。
お店で使う甲州織の生地は、撚り合わせた糸で織られているので丈夫で、
重厚感があり上質な印象に。
洋傘には主に8本骨と16本骨があるのですが、私は特に8本骨に思い入れがあります。16本骨は骨組みである程度傘の形が決まりますが、8本骨は骨と骨の間の生地が広いので、特に職人の腕にかかっているのが大きくて。理想的な形に仕上げられたときは達成感がありますね。
8本骨の傘。生地の割合が大きく、丸みのあるシルエット。
16本骨の傘。丈夫で、閉じたときのひだが美しい。
雨の日って憂鬱になりがちですよね。だから傘が元気を与えられる存在になればと思い、中面のチェック柄が外側からも見える華やかな傘をつくったのは、特に思い入れが。こういった工夫の積み重ねでお客さまの日常に花を添えたいです。
留め具や中面、傘袋にワンポイントでチェック柄を。
〈PROFILE〉
洋傘職人。甲州織を使った丈夫で美しい傘が人気の「小宮商店」で5年前より職人として働く。フォルムが美しく仕上がるよう細部まで丁寧にこだわっている。
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